犬の目線から見た町の日常生活を描いた、ほっこり心温まるお話です。
しとしとと降る雨が心地よい日に、雨音を聞きながらゆっくり読みたい1冊。全267ページです。
月舟町で暮らす人々を取り巻く物語。映画館の番犬”ジャンゴ”の目線で物語が進んでいきます。
人間の言葉を話せない犬だけど、全てを理解しているのがジャンゴ。
町の人々に可愛がられる賢いジャンゴは、今日もレインコートを着ることを拒みたい・・・。
いつもお散歩に行ったらきっかり45分で帰ってくる映画館の主が帰ってこない、というプチ騒動があります。
その騒動の流れを全て把握したとき、ジャンゴと主の絆、愛を感じてジワジワと感動してしまいました。
ジャンゴははじめ、一方的に自分が主を慕っている、主は仕方なく映画館と私の世話をしているんだ、と思い込んでいるのですが、物語が進むにつれてそんなことはないということが分かります。
犬のジャンゴ目線で進むお話ですが、以下のジャンゴの言葉が特に印象的でした。
「私はこう見えて、多くの人間たちに『可愛い』と頭を撫でられる身であるが、人間のこうした道理の通らない考えや行動こそ、可愛く見える。愚かしいことはときに可愛い。可愛いことは、おおむね愚かしい」
いや賢すぎだろ。達観しすぎだろ。そりゃ、町のみんなもつい彼に話しかけたくなってしまいますよね。
この一言が示すように、ジャンゴの視点から見た人間の愚かしさと愛らしさが巧妙に描かれており、思わず微笑んでしまいます。
まったりほっこりと小説を読みたい方にはとてもオススメの1冊です。ぜひ読んでみてください。
月舟町の物語のうち、本書は第3部作のようです。前2作品はまだ読めていませんが、またこの町を覗けると思うと楽しみです。
コメント